恥ずかしさで目を閉じる

「甘いね」

 

「えっ?」

 

「聞こえなかったのかい。

 

君の乳首の匂いは、甘い。

 

と言ったんだよ」

 

「そんなところに、匂いなんて……」

 

裸でベッドに横たわるわたくしの上に、服を身につけたままで覆い被さっている男性は、女の肢体の匂いを嗅ぐのが好きなのです。

 

そうに違いないとわたくしは思いました。

 

だって、そうでなければ、どうして、磨き上げられて美しく熟れた人妻の肢体を目の前にして、いつまでも服を着たままでいられるでしょう。

 

あの方の鼻が、わたくしの肢体の中心をしだいに下へ下へと降りてゆきます。

 

お臍までくると一度止まって、その匂いを嗅ぎ、少し不満そうに首を傾げました。

 

きっと匂いがしなかったんだわ。

 

わたくし、お臍の手入れも欠かしていませんもの。

 

下腹の繁みに鼻が到達したとき、わたくしは無意識に両脚のあいだを開こうとしてしまいました。

 

それを、あの方の両手が押しとどめます。

 

恥丘に生えた下ばえを鼻で嬲っては、その匂いを嗅ぐ。

 

そんなことをしばらく、くり返してからあの方は、わたくしの下腹から顔を上げて、うっとりとため息をつきました。

 

下腹をかすめた熱い吐息を感じて、わたくしの両脚のあいだからは、とろりと蜜液が溢れ出します。

 

「あっ……」

 

わたくしの肢体の下で、溢れた蜜液がシーツに垂り落ちたのを感じて、思わず声をだしてしまいました。

 

「どうかしましたか?」

 

「いいえ」

 

恥ずかしさで目を閉じると、腿にかかっていたあの方の両手で、わたくしの両脚がゆっくりと開かれてゆきました。

 

わたくしはそれ以上目を開けていることができませんでした。

 

「ここも、とても甘い匂いがするんだね」

 

どんな、匂いですか?

 

こころのなかで、問い掛けると、あの方が答えてくれます。

 

「そうだな、果物のような匂いだね」

 

そう言って、あの方がわたくしの脚のあいだに触れました。

 

目を閉じていて見えませんでしたけれど、指ではなく、鼻のようだと思いました。