日本人女性
「およしになってください。
そんな、はしたないこと……」
「本当に、やめてもらいたいと思っているのですか?」
身体の芯がしびれるようなアルトのささやきに、わたくしは「あぁ……」と、ため息を漏らしたのでした。
「服を、全部脱がせてしまっても、かまわないでしょうね」
かまわないどころか、早くそうしてもらいたいと願っているくらいでした。
女の服がどういうふうになっているものなのか、あの方はよくご存知のようでした。
迷いなくわたくしのスカートを脱がせてしまうと、ブラウスのボタンを外しはじめます。
シルクジョーゼットのザラッとした感触のブラウスは、共布でくるんだ小さなボタンがたくさんついていました。
ああ、どうしてわたくしは、こんなにたくさんボタンのついたブラウスを今日に限って、着ているのかしら。
滑りの悪い布地どうしがきしんで、ボタンはなかなか外れないに違いないわ。
ところがあの方は、魔法のような指先で易々とブラウスのボタンをすべて外してしまったのです。
手刺繍のほどこされたブラジャーは、清楚な白でしたけれど、デザインは充分官能的だったはずなのです。
でも、あの方は、わたくしの身体を見もしないで、ブラウスに顔をつけていました。
そうなのです。
匂いを嗅いでいたのです。
襟の内側を嗅いだあとに、袖の付け根に鼻を押しあてて、あの方はしばらくそのまま動かなくなってしまいました。
声をかけようかどうしようか、迷っていますと、顔を上げたあの方がわたくしに微笑みかけてくれました。
「素敵な匂いだね」
そんなことを言われて、なんと答えたらよいものでしょうか。
ブラジャーとパンティとガータベルトにも、あの方は同じことなさいました。
ときどき、自宅の姿見に全身を写して見ることがありましたが、わたくしの身体は、それは美しいものでした。
身長は日本人女性にしては少し高めで、モデルさんほどではありませんけれど、均整がとれていて腰から下が長いのです。
バストはけっして大きいほうじゃありませんけど、形はいいと思います。
ちっとも垂れてなんかいませんでした。
それになんと言っても、乳首の色が薄桃色をしていました。