抱き上げられて寝室へ

わたくしは、あの方に抱かれることを想像しながら、夫に身をまかせました。

 

「ああっ……あっ、あっ、あぁ…っ……」

 

ピストン運動が激しくなると、夫は黙ってしまいました。

 

いけないことだと思っても、わたくしは、あの方を脳裏に思い浮かべておりました。

 

わたくしの背後でヒップを鷲づかみにして、激しく腰を振っているのは夫ではなく、あの方だと思うことをやめられません。

 

心で夫を裏切っているのに、わたくしの肢体はますます熱くなってしまうのです。

 

気がつくと、自分からヒップを突き出して、いやらしく動かしていました。

 

ムスコをもっと深く迎え入れるように。

 

もっともっと激しくアソコに突き刺されたい。

 

奥からは、たくさんの蜜が溢れて、愛しいあの方を迎えようとしているのです。

 

「うっ……締まる」

 

「あっ、あなた……」

 

「ううっ、いかん」

 

いきなり抜かれたので、一瞬、なにがどうなったのかわかりませんでした。

 

背中に熱さを感じたわたくしは、それが冷えていくにつれて、夫がわたくしの背中に精液を出したことを知りました。

 

「子供は、ひとりで充分だからな」

 

取り繕うように、そんなことを言う夫に対して罪悪感をおぼえました。

 

さっきまでのわたくしは、夫のことなど忘れていたのです。

 

夫は急に優しくなって、わたくしの背中をタオルで綺麗に拭ってから、抱き起こしてくれました。

 

その瞳を、わたくしはまともに見ることができませんでした。

 

「なんだ、そんなに顔をそむけて、恥ずかしいのか?」

 

「ええ」

 

「そうだろうな、ずいぶん、乱れてたからな」

 

夫の勘違いに、わたくしは救われました。

 

別の男のことを考えていたなんて、露ほども疑っていない夫は、満足そうに笑っています。

 

「続きは、寝室でするか」

 

新婚のときのように、抱き上げられて寝室へ運ばれながら、わたくしはまた、あの方のことを想ってしまったのです。

 

「さて」

 

ベッドに下ろされて、夫の手で衣服を脱がされていると、どうしても思い出してしまいます。